1996年1月末、鹿児島の百武裕司さんによって発見された新彗星は、百武彗星と命名され、その後、地球に接近する大彗星に成長しました。3月始めには肉眼で捉えることも難しく、果たして本当に明るくなるのだろうかといった不安さえありましたが、20日を過ぎた頃から日毎に明るさと尾の長さを増してゆきました。地球最接近直後の26日には、北極星の近くに青緑色の頭部をおいて尾の先はおとめ座まで達する、半天を結ぶほどの長大な尾をなびかせるまでになったのです。■尾の変化スケッチ
日本時間25日に核の一部が分裂し後方に移動する様子がハッブル宇宙望遠鏡によって観測されましたが、上の画像にあるように26日(世界時25日)には、その分裂した核が後方に第2の尾を形成し、27日(世界時26日)にはさらに後方に移動して拡散している様子が見事にとらえられています。
これらの画像の撮影は連日の晴天域の探索に努力が費やされました。連日、多くは600キロを走破し、そして合計90コマのシュミットカメラによるネガを得ました。20センチF1.5の高速シュミットカメラは、彗星のプラズマテイルの詳細を見事に写し取っています。途中、彗星の尾は、カメラの写野10度をはるかに超えましたが、高速シュミットの特徴を生かし、尾の全容をモザイクによってつなぎ撮る方法をとりました。