天体ビデオヒストリー

フレームとフィールド

流星観測での注意点

沼澤茂美

 
 しし座流星群、及び、ジャコビニ流星群間近となりました。I.I.などを用いた流星のビデオ観測は、眼視観測よりも暗い流星をとらえ、有益なデータをもたらします。
しかし、写真とは異なって、ビデオ特有の映像の仕組みを理解しないと、誤ったデータを導くことになります。今一度、ビデオの映像仕様を考えて見ましょう。
 テレビの映像NTSC(日本やアメリカが採用している方式)の場合は、高速で水平に移動する525本の走査線によって再現されます。テレビ映像が、毎秒30「フレーム」で作られていることは多くの人が理解しています。しかし、その1フレームが映画のような1枚の写真のようなものではなく、高速に動く走査線の集合であることをなかなか実感することが出来ません。しかも、1/30秒の1フレームは、さらに1/60秒の2つの「フィールド」があわされて作られます。つまり、フレームは、全走査線を1つおきに構成する「奇数フィールド」と、その間を埋める「偶数フィールド」に分かれ、それぞれ525/2本=262.5本の走査線で作られています。したがって、ビデオ画像の最小単位は1フレームではなく、1/60秒の1フィールドと考えることが出来ます。この様な2つのフィールドが順番にすき間を補うように飛び越しながら走査する方法を「インターレース方式」と呼んでいます。
 ほとんどの場合、私達がVTRに記録された映像をストップモーション(ポーズ)で見るときの画像は、奇数、偶数フィールドのどちらかのフィールド・イメージを見ていることになります。これは、ビデオテープがストップした際に、それをトレースする2つのフィールド再生ヘッドが1フィールド分のトラックしかトレースしないためです。
(多くの家庭用業務用VTRは、ストップモーションで奇数フィールドが見えるように作られています。)ですから、通常のアナログVTR(VHS,S-VHS,8mm,Hi-8mm,Beta・・・)のポーズ操作によって、奇数フレームと偶数フレーム両方で構成された美しいフレームを見ることは出来ません。しかし、ここでコマ送りをしてみると、30コマで1秒進むことに気がつきます。このことが、多くのユーザーを誤解に導きます。「1秒間に30コマ動くので一コマはフレームに違いない。」という解釈です。しかし、からくりはこうです。
 テープ走行が停止している限り、回転ヘッドは、一列のトラック、つまりフィールドしかトレースできません。ところが、コマ送りするとテープは1フィールド飛び越えて2フィールド分動いてしまうのです。
これは、テープ走行を制御する信号が、2フィールド毎に記録されるためです。再生記録時は、連続してテープが動くので、走行制御信号の間に2フィールドを正確に記録再生できます。
 非常に重要なことですが、ビデオをコマ送りして映像解析を行うと、奇数・偶数フィールドのうちどちらかは、見ることができないということを認識しなくてはなりません。
たとえば、流星ビデオをコマ送りしてこれをコンピューターに取り込み合成すると、あたかも回転シャッターで切ったような波線の流星像ができあがります。これは、フィールド間のスピードをあらわしているわけではなく、単に1フィールドおきの画像を合成したに過ぎないということになります。しかも、テレビ映像は、垂直方向に525本の走査線で構成されていますから、イメージの分解能は,縦525本しかないことも重要です。特に流星のスピードを求めるとき注意が必要です。
 なお、先回も記したように、DV-デジタルビデオにおいては、記録フォーマットに、フィールドやフレームの制約を受けません。コンピューターへの取り込み時も奇数・偶数どちらのフィールドも選択抽出できます。また、TBC機能を持つ業務用Beta-CAMなどのアナログ VTRには、奇数・偶数フィールドの選択再生が出きるものもあります。

1998年 Shigemi Numazawa

詳細は英文図解ページ

図)アナログビデオの代表的記録パターン。映像トラックは、奇数偶数フィールドごとに記録




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