天体ビデオヒストリー

しし座流星雨に備えて1

沼澤茂美


 今年か、来年かと期待されているしし座流星雨。皆さんはどのようなとらえ方を考えているのでしょう。過去のしし座流星雨の凄さは有名な木版画に示されていますが、前回の1966年の時は写真撮影が行われ、アメリカで出現したピーク時のおびただしい数の流星が1枚の写真上に記録されました。もちろん、写真に記録された流星以上のものが肉眼で観測されたことは言うまでもありません。
 現在、流星の記録手段として最も期待されるのは、やはり、超高感度ビデオカメラによる記録ではないでしょうか。リアルタイムの記録は流星雨という天文現象を最も忠実に再現してくれます。また、ビデオに最適の対象が流星の撮影であることは今までの流星群観測の実績からもうかがい知ることが出来ます。
 さて、ビデオによる微光天体の撮影法はいくつかありますが、対象の性質上、リアルタイム記録と言うことになると、スローシャッターでの蓄光撮影、間欠撮影は適切な方法ではありません。もちろん、1等級の明るい流星ならば、たいていのカメラで写すことが出来ますが、1等以下のものを明瞭に写すとなると、もっと瞬間的な感度の高い装置が要求されます。
 今日、一般に入手可能な光増幅装置はI.I(イメージインテンシファイヤ)に限定されると言えるかもしれません。I.Iは入射した光を1万〜数万倍に増幅する装置で、増幅されたイメージは、入射部と反対側の蛍光面に緑色像として結像されます。その像を何らかの方法でビデオカメラに導いてやれば、超高感度ビデオカメラができあがります。
 ビデオカメラへ像を導く方法はリレーレンズ法が一般的で、約20〜30ミリの直径のI.I像とビデオの受光面(CCDなどのデバイス)のサイズからジャストフィットする像倍率を求めて作られます。今日では民生用の小型ビデオカメラに取り付けられるように、ビデオレンズをそのまま生かしたリレーレンズも作られています。
 心臓部のI.I は国内では浜松ホトニクスなどで生産されていますし、外国製や米軍の払い下げ品も多くでまわっているようです。寿命などの問題があるため、出来るだけ新品を求めることをお薦めします。使えるI.Iの相場は、30〜150万ほどの高価なものです。週刊誌などで宣伝されている安価なものは像面が小さくひずみもひどいのでお薦めできません。
 最近は、マイクロチャンネルプレートのみを用いたMCP型も多くでまわり、これは、従来のチューブ式I.Iに比べて非常に薄く、小型のシステムが構築できます。なお、写真に示すような汎用性の高いI.Iシステムが、アメリカ、ヨーロッパで数種でまわっています。これらの入手法については、出来るだけ早くお知らせするつもりですが、I.I関連は軍需品の扱いになるため、販売国の輸出手続きなどが特殊で、入手までに数カ月を要することもありますの注意して下さい。

1998年 Shigemi Numazawa  


キャプション1
I.Iとビデオカメラを接続する方法

キャプション2
様々なビデオカメラ、スチールカメラに取り付け可能なエレクトロフィジクス社のI.Iシステム。国内でも汎用性の高いシステムを考案してほしい。




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