第140回
1998/10/4
ジャコビニ流星雨
高まる大出現への期待
今年最大の天文ショーとして、11月の「しし座流晴雨」が注目されています。しかし、それに先立って、今月の8日夜から9日朝にかけて出現の可能性がある「ジャコビニ流星雨」は、一般への関心は盛り上がらないまでも、多くの研究者が、その大出現を密かに期待しています。
ジャコビニ流星雨は、6.6年周期で公転する「ジャコビニ・ジンナー彗星」がまき散らすチリが原因となって出現する流星雨です。しかし、彗星の軌道と地球の位置関係から、その周期の2倍に相当する13年の周期で流星雨がおこります。別名「りゅう座流星群」。これは、放射状に流れる沢山の流れ星の中心「輻射点」が、りゅう座の頭付近にあることから付けられました。
過去のデータを調べてみると、1933年の出現時、ヨーロッパは夕方の頃で輻射点が高く、最良の条件だったようです。1時間に数えられた流星の数は6000個に達しています。
1946年には、アメリカで大出現が観測されています。満月にもかかわらず、この時、1分間に50-100個の流星が数えられました。
ABCラジオは、予想されたピーク時間に、流星群についての15分間のライブ放送を計画していました。これは、見事に的中し、放送を聞いた多くの聴視者が屋外に飛び出したと言います。
1972年の出現は、日本が最良の条件であるということで、多くのマスコミによって報道され、大騒ぎとなりました。しかし、予想された出現はなく、あらためて流星雨の予報の難しさを示したのでした。
次の周期である1985年は、前回の失敗から、周知もされずに観測者のみが注目していました。予想は、8日の夜中。ところが、出現したのは、4時間も早い8日の宵の頃で、多くの観測者が夕食をとっている間に1時間に換算して700個に相当する流星が流れました。
今回は、彗星軌道と地球の位置関係から、多くの出現の可能性が示唆されています。大方の予想は、9日の朝6時頃、しかし前例が示すとおり、その時刻が速まる可能性は十分にあります。ピークは30分〜1時間しかなく、そのタイミングを逃すと流星の数は激減します。
輻射点の方向は、夜半過ぎには北極星の下の低い位置になりますので、北の空の開けた場所が観望に適しています。流星雨になった場合、もちろん沢山の流星は、空全体に飛び交うことになります。
壮大な天文ショー。その出現の確たる保証はないまでも、空を見上げない限り、その景観に遭遇することはできません。
キャプション:
ジャコビニ流晴雨の想像図。8日夜から9日朝にかけてこの様な壮大な景観を見ることができるかも知れません。
輻射点の方向は、真北の空の低い位置です。(中央右よりの明るい星が北極星)